【書評,レビュー】『ヴァイオリン奏法』by レオポルド・モーツァルト ヴァイオリン初心者から上級者、独学者へ

**注意**
2017年5月に新訳版の『ヴァイオリン奏法』が出ました。
この記事は旧版の『ヴァイオリン奏法』に基づいています。



レオポルド・モーツァルト...

その名前を聞いて思いつくのはどんなイメージでしょう?
この肖像画を思い出した人、それは初めて『バイオリン奏法』を知った時の私と同じです。

上の写真の人はヴォルフガング・アマデウスモーツァルトです。

レオポルド・モーツァルトはヴォルフガング・アマデウスモーツァルトの父親です。


レオポルド・モーツァルト(Johann Georg Leopold Mozart)↑


レオポルドと記載があるものもあれば、レオポルトと濁点のない記載のものもあり、
実際にはこれは日本語、英語読みのあやだと思いますが、
この先はレオポルトと記載することにします。





『バイオリン奏法』の初版は1756年だそうです!!!
バイオリンに関わっていると思うのですが、バイオリンはつくづく年代感覚がすごいですね。


『バイオリン奏法』の序

バイオリンという楽器の歴史や仕組みについてからはじまります。
ついつい演奏には直接的に関わってこなさそうに見える箇所ですが、
バイオリンという楽器を知る上で重要なことがたくさん書かれてあると思います。

バイオリンの弦が4本、それぞれの弦が適切な太さでなければならないことや、
裏板の木は表板よりどうなっていなかければならないか、
駒、魂柱についてなど...

音楽の起源などにも触れらています。

ここまでが序です。





次に第一章に移り、拍子についてや音符、音楽記号などの項目に移ります。

拍子について

オポルトは、「拍は音楽の魂です」と述べています。
続けて、拍子ががいかに大切かを力説します。そして、多くの人はこの拍子の感覚がないがためにもったいないことになっていると嘆いています。

拍子には4分の4拍子や8分の3拍子などさまざまな種類の拍子がありますが、
拍子の特徴を解説している部分もあります。

オポルトは音楽に必須な拍子をあげていますが、
注釈では、とりあげなかった拍子についても触れ、それらは価値が全くないと述べています。

『バイオリン奏法』という本全体に言えますが、ところどころでレオポルトの怒り、音楽への情熱を感じることができます。
枝葉末節にこだわる人には1分の3拍子を気前よく差し上げると述べています(笑)。




音符、休止符、符点などの長さ、または価値について。同時に、全ての音楽記号と音楽用語について

休止符の必要性について3点から述べています。
そして、音符の価値について述べます。

音楽の知識がすでにある方なら、うんそうだよなと思いながら読み進めていけますが、
きちんと言語にあらわされていて、再確認できる意味合いも強いですし新しい発見もあります

多くの譜例は示しながら、
例えばここでは符点を普通の長さで弾いたら活気がなく眠くなるように聞こえます。このような場合...
といったように解説してくれていて、イメージがつかみやすくわかりやすいです。





次は第二章です。

バイオリンの持ち方と弓の扱い方

ここから第二章なのですが、第二章の冒頭で、
「教師は今まで論じられてきた事柄を、生徒が全て理解し...(略)...よいとなれば、いよいよ生徒の左手に正しくバイオリンを持たせます」
とあります。

つまり、第一章までのことを理解して覚えるまではバイオリンを持たせるなということでしょう。
熱いぜレオポルト...


このページでも絵が使われて、バイオリンの持ち方や姿勢がわかりやすく解説されています。
ですが、この当時は肩当てはおろか顎当てもつけていない時代なので、それらを考慮して読み進める必要があるでしょう。

とは言うものの、バイオリンを持つこと、そして弓を扱う上での金言がたくさんあります


バイオリンの位置については高すぎず、低すぎず。
これを実現するために楽譜を見る際に身をかがめる必要がない高さに楽譜をおきましょうという記述まで...とても細やかに述べられています。


ちょっと笑ってしまった箇所もあります。
バイオリンは一定の位置で支えなければならないと述べています。
そして、「これは、ストロークの度にバイオリンを表向きにしたり、裏返しにしたりして、見物人に笑われないように、という意味です」と(笑)。
バイオリンを弾きながら体を揺り動かすバイオリン弾きにはかなり痛烈な指摘をしています。
床や部屋全体が揺り動くかと思うほどとか、苦労している木こりとか、たとえが面白いです。

ほかにもたくさん興味深いところがあり、この記事の中で述べきることはできません。

バイオリンの指板に音名を示すラベルを貼り付けたりすることも馬鹿げた方法だとし、かなり怒っています。
一部の教師が生徒に行っていると書いてありますが、200年以上経っても状況は変わってないですよレオポルト先生!とちくっておきましょう。







次は第三章です。

生徒は弾き始める前に何を守らねばならないか。言葉を換えて言うと、一番始めに生徒に何を示さなければならないか

曲を演奏する前の注意事項としてその曲の調があり、それについて述べられています。

初心者がすべての音程になじみ正しく弾くための練習の音階が2つあげられていて、とても実用的です。

最後には、同じ指で異なった位置の音をたくさん引く練習ができる例もあげられています



『バイオリン奏法』には解説のための譜例だけではなく、練習し上達するための譜例もたくさんあるのが嬉しいですね。






次は第四章です。

上弓と下弓の理法について

どういうときに上弓と下弓を使うのかという用例解説がなされています。

通常、バイオリンの楽譜を買うと大体弓使いは載ってることが多いですが、
根本的な考え方について学べます。

経験者にとっては、「そりゃそこは上げ弓だよね」って感じなところもきちんと解説されています。


つまり、楽譜にいちいち上げ弓や下げ弓など書いていなくても、楽譜から読み取りましょうということだと思います。

ボウイングというのは天から降ってきたように決まるのではなく、音型やリズムなどで複合的に変わりますよね。
自分で編曲等をもししたり、あるいは楽譜だけはあるけどバイオリンの楽譜じゃないからボウイングが書かれていなかったりしても、困らないようにしましょうということでしょう。


そして四章の最後には毎度ありがたいことにボウイングの練習がすぐにできるように楽譜を用意してくれています。

どうしてこういったボウイングになるのか、ボウイングの練習をするためにはどんな楽譜で練習すればよいかまで具体的に述べられていていいですね。




次は第五章です。

弓を巧みにコントロールし、いかに美しい音色をバイオリンから引き出すか。正しい様式の中で生み出すか

題名からして心惹かれますね。

バイオリンを演奏する上で求めるのはやはり美しい音色だと思います。


でも、「もっと早くにこのこと書けよ!なんで第五章とかけっこう後ろのほうになってんだよ!」と言ってしまいそうになる人のことをすでにレオポルトは見抜いています。
ばればれです。

おそらく皆さんのうち、これから述べるような事柄はここではなくもっと前に入れたほうがよいのに、と思われる人もいることでしょう。...(続く)”

オポルトがなぜ第五章にこの内容を持ってきたのか、続きは本書で。。。


バイオリンを弾くことにおける弓のコントロールの極意が書かれています。





次は第六章です。

3連符と呼ばれるものについて

最初の私のこの章への印象は、

「えっ、3連符に1章分も割くの???」

という感じでした。


しかし、レオポルトはこう述べています。

3連符は上手に弾かれるととても魅力的なものですが、そうでないと同じくらいつまらないものなのです。多くの人は案外これに失敗します。


この章でぜひレオポルトの伝えたかった3連符について学んでください、私もがんばります。。。




次は第七章です。

種々のボウイングについて

この章は第1節「同じ音符におけるボウイングの変化」と第2節「様々の音符よりなる音型におけるボウイングの変化」に分かれています。

人を感動させる音を引き出すにはどうすれば良いかということが書かれています。

用例をふんだんに使い、こういった時はこう、ああいう時はこうという感じで、
具体的に述べれれています。


そしてこれらを実現するための練習譜例まで書かれています。
至れり尽くせりですね。




次は第八章です。

ポジション

この章は「全ポジションについて」「半ポジションについて」「複合または混合ポジションについて」と分かれています。

「全ポジション?半ポジション?混合ポジション?何それ?」って人も特に気にしなくて大丈夫で、
奇数ポジション、偶数ポジション、それらのコンビネーションってだけです。
読んでいたら詳しい注釈もあり、バイオリンを弾く人ならわかると思います。


ポジション移動の効用や実例があげられています。

いつどのポジションを利用すればよいのかの見分け方や、
ポジション移動が極度に上手くなる方法も書かれています。

”ある曲を流ちょうに弾けたとしても、このポジションではそう急には巧く弾けません。練習のために..."




ポジション移動の練習例も多彩です。

この第八章の最後には重音についてのとても大事なことが書かれています

バイオリニストは、重音を弾くときにそれを役立てることができるし、また優れた音色で力強く、正しい調子で弾くのにも役立ちます。

さて、それはどのようなことなのか。。。

続きは本書で。



次は第九章です。

前打音とそれに属する装飾音について

前打音、装飾音に関する規則や悪い例などを挙げています。

前打音は混乱した耳ざわりな演奏をするためにつくられたのではありません。いや、演奏をつなげ、滑らかに、音楽的に、心地よく聞こえるようにするためのものなのです。


まちがった装飾音に対する怒り、
そして演奏効果を増す装飾音、それが織りなす音楽について述べられています。

ぜひこの章でレオポルトの思いを感じて装飾音について学びましょう。




次は第十章です。

トリルについて

その題名のとおり、トリルについての解説です。

トリルをどのように弾けばよいか、どんなところに注意すべきか、練習することで何を目指さなくてはならないか




次は第十一章です。

トレモロ、モルデント、その他即興の装飾音について

トレモロで弾くというのはどういうことか、どのような状態を目指せば良いのか。

モルデントやその他の装飾音についてもどうように解説されています。




最後は第十二章です。

楽譜を正しく読むこと。特に優れた演奏について

バイオリンを弾くこと、そして音楽を奏でることについてとてもとても情熱的に書かれています

全ては優れた演奏にかかっている。

バイオリンの弾き方をいろんな角度から解説したのも、優れた演奏のためですよね。

そして、良い演奏をするということの困難さにも言及しています。

楽譜を正しく読むことの重要性も再々触れらていて、考えさせられる貴重な言葉ばかりです。


この本で最も大事な章をあげるとするなら、この最終章ではないかと思うほど大切だと感じでいます。




以上、長々と書かせて頂きましたが、
お読みくださってありがとうございました。

オポルトの『バイオリン奏法』は買って損のない本、いやそんな言葉を発することすらおこがましい、
バイオリン本の偉大な遺産だと思います。

ぜひご一読ください。


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